富察氏が刑期満了で出所も付加刑により出国制限
台湾の出版社「八旗文化」の編集長である「富察」こと李延賀氏が、中国大陸での3年間の服役を終えて今年5月に出所した。しかし、判決に含まれる1年間の「付加刑」により、現在は中国大陸からの出国が制限されている。このため台湾への帰還は見通せない状況が続いており、中国政府の台湾事務弁公室(国台辦)は本件への正面からの回答を避けている。富察氏の今後の動向に関心が集まっている。
拘束から国家分裂煽動罪による判決までの経緯
満洲族の血を引く富察氏は中国大陸の出身だが、台湾人の妻との結婚を機に長年台湾で暮らしてきた。同氏が設立した「八旗文化」は、中国共産党(中共)の歴史観やイデオロギーと対立する、いわゆる「中国の禁書」を数多く出版していたことで知られる。
富察氏はすでに台湾へ入籍し、台湾の身分証明書を取得していた。2023年3月、台湾政府が定める「陸配(中国大陸籍の配偶者)」の規定に基づき、中国大陸側の戸籍を抹消する手続きのために上海へ戻った際、上海の国家安全当局に秘密裏に拘束された。その後、2025年2月に上海市第一中級人民法院の一審判決が出され、富察氏は「国家分裂煽動罪」により有期刑3年、政治的権利剥奪1年の判決を言い渡され、併せて個人財産5万人民元の没収が科された。
出所後の現状と付加刑による出国制限の影響
台湾メディアの報道や関係筋の証言によると、富察氏は今年5月に刑期を満了して出所した。現在は中国大陸にいる両親ら家族と団らんを果たしており、台湾にいる妻が中国へ渡って面会することも可能だという。
関係筋は「見たところ身分は自由のようだが、ただ出国ができない状態」だと語る。しかし、富察氏の友人である台湾作家の胡川安氏(中央大学助理教授)がBBC中文に明かしたところによると、メディア報道で出所を知った後に様々な方法で連絡を試みたものの、依然として本人からの返信はなく、出所後も軟禁状態にあるのではないかとの懸念も示されている。
台湾帰還を阻む政治的権利剥奪と過去事例との違い
富察氏が台湾に戻れない最大の要因は、主刑を補う形で科された「政治的権利剥奪1年」という付加刑である。中国の「出入国管理法」では、中国公民が刑罰の執行を完了していない場合、出国を認めない規定となっている。専門家の分析によると、富察氏は依然として中国大陸籍の身分を保持しているとみなされており、1年間の付加刑が満了した後に台湾へ出国できるかについては、中国当局による個別の「辺境控管(出入国管理・制限)」措置が適用される可能性など、多くの不確定要素が残されている。
また今回のケースは、過去に中国で拘束され、出所後に付加刑を服役することなく直接台湾へ帰還できた台湾人活動家・李明哲氏の事例とは完全に異なる。富察氏は中国の「両高(最高人民法院と最高人民検察院)」の報告書において、台頭(台湾独立派)を処罰した具体的な事例として列挙され、中共の「両会(全国人民代表大会・全国政治協商会議)」期間中にも大々的に宣伝されていた。家族が事を荒立てずに低調な対応を続けてきたにもかかわらず、中国当局は厳格に付加刑を執行する姿勢を崩していない。
国台辦は記者会見で事実関係への明言を避ける
中国国務院台湾事務弁公室(国台辦)の張晗報道官は、10日午前に北京で開かれた定例記者会見で、台湾メディアから富察氏の出所および出国の現状、そして付加刑満了後に必ず台湾へ戻れるのかについて問われた。これに対し張報道官は、「李延賀の案件について、関係部門は一貫して法に基づいて処理しており、同時に當事者の合法的権利を法に基づいて保障している」と、従来の公式見解を2言述べるにとどめ、出所の事実関係や今後の見通しに関する具体的な説明を避けた。
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