台湾総統のアフリカ訪問中断、米中が応酬
台湾の頼清徳総統のアフリカの友好国、スワジランド訪問計画が、中国の圧力により中断に追い込まれた事件で、米国務省は22日、「北京当局が国際民間航空体系を悪用して台湾を威嚇し、国際平和と繁栄を脅かしている」と批判した。米国務省報道官は、セーシェルなど3カ国による領空通過許可の取り消しは中国の指示によるものであり、航空安全のための領空管理責任を政治的道具に変質させたと指摘。中国に対し、台湾への軍事・外交・経済的な威嚇をやめるよう求めた。ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)などが伝えた。
中国外務省の郭嘉昆副報道局長は23日、米国は「是非を混同し、白黒を逆転させている」と反論。一つの中国原則は国際社会의普遍的な合意であると主張した。郭氏は、関係国の対応を支持するとともに、米国に対し台湾問題を通じた内政干渉や、台湾の国交維持を助ける行為を止めるよう促した。
頼総統は22日、「2300万の台湾人には世界へ向かう権利がある」と述べ、圧迫に屈しない姿勢を強調。台湾で対中政策を所管する大陸委員会(陸委会)は、中国が優遇措置を提示する裏で妨害を行う「両面作戦」を展開していると批判した。領空通過拒否を理由とする外遊の中断は極めて異例で、国際的な波紋を広げている。
中国による「領空の政治利用」とアフリカ諸国への経済的圧力
今回の訪問中断の直接的な原因は、セーシェル、モーリシャス、マダガスカルのアフリカ3カ国が、事前に与えていた台湾総統専用機の領空通過許可を突如として取り消したことにある。台湾の安全保障当局の分析によれば、背景には北京当局による強力な経済的圧迫が存在する。具体的には、通過を許可した場合、これらの国々が中国に対して抱えている巨額の債務に関する免除措置を撤回し、新たな経済制裁を課すと脅迫したとされる。
中国は長年、アフリカ諸国に対してインフラ投資や多額の融資を通じて影響力を強めてきた。今回の事案は、主権国家が持つ領空管理権という航空安全に直結する公的な権限を、特定の政治的目的――すなわち台湾の国際的な孤立化――のために行使させた点で、国際民間航空条約(シカゴ条約)の精神を著しく損なうものといえる。米国や欧州連合(EU)が「政治的動機に基づくべきではない」と異口同音に批判しているのは、この航空安全の枠組みが政治化されることへの強い危機感の表れである。
中国外交部は、これらの国々が「一つの中国」原則に基づき自発的に判断したと主張するが、債務問題という弱みを突いた「人質外交」の側面は否定できない。アフリカにおける台湾の邦交国がスワジランド(エスワティニ)1カ国にまで減少している現状において、中国は物理的なアクセス経路を遮断するという新たな段階の打圧に踏み切ったといえる。
「鄭習会」直後の打圧に見る中国の両面戦略と台湾の経済的自信
事件が発生したタイミングも極めて示唆的である。台湾の野党・国民党の鄭麗文主席が習近平氏と会談した「鄭習会」の直後であり、北京側が「10項目の恵台(台湾優遇)措置」を公表した矢先であった。台湾の陸委会は、北京当局が「アメとムチ」を使い分ける典型的な両面作戦を展開していることを意味すると指摘する。民間交流や経済的利益を餌に融和ムードを演出する一方で、国家元首の正当な外交活動に対しては一切の容赦をしないという強硬姿勢を鮮明にした。
しかし、台湾側の対抗姿勢もこれまで以上に強固だ。台湾経済部が発表したデータによれば、2026年の台湾のGDP成長率予測は7.6%と極めて高く、アジアの新興経済体の中でも突出したパフォーマンスを見せている。特に「5大信頼産業(半導体、人工知能、軍事産業、監視システム、次世代通信)」および「AI10大建設」を通じた世界サプライチェーンへの食い込みは、もはや中国市場に依存せずとも持続的な成長が可能であることを示唆している。
頼政権は今回の事態を受け、中国による経済的な揺さぶりに屈しない「経済安全保障」の重要性を再確認した形だ。国際社会においても、台湾のハイテク産業への依存度が高まる中、台湾総統の移動の自由や安全が脅かされることは、グローバルな安定に対するリスクと見なされ始めている。今後、米国を中心とした有志連合が、民間航空路の確保や第三国への外交的支援を通じて、中国の封じ込め策にどう対抗していくかが焦点となるだろう。
[出典]
- 美国谴责中国干涉台湾总统的出访活动 – RFI(美国谴责中国干涉台湾总统的出访活动)
- 美批中國向3非洲國家施壓 北京敦促恪守一中原則 – 中央社 CNA(美批中國向3非洲國家施壓 北京敦促恪守一中原則)
