台湾唯一のAPTメーカー会長殺害事件で元従業員を逮捕
台湾で唯一、パラタングステン酸アンモニウム(APT)を生産する京沅タングステン・コバルト資源(屏東県枋寮郷)の黄聖玹会長(56)が7月24日、自宅で殺害された事件で、台湾警察は8月4日、中部で元従業員の陳姓の男を逮捕した。同日午後には容疑者を現場へ連行し、実況見分を行うとともに、犯行状況の再現や証拠収集を進めた。APTは高純度タングステンの原料で、半導体や軍需製品の製造に用いられる。
元従業員が窃盗を試みた疑い
捜査当局によると、男は以前、黄会長の工場で勤務し、自宅の清掃や管理も手伝っていたため、豪邸の間取りや警備体制を熟知していた。事件当日は黄会長の留守中を狙って侵入し、窃盗を試みたとみられるが、黄会長が突然帰宅したため犯行が発覚した。
男は黄会長の手足を透明な粘着テープで縛って拘束した後、口論となり、バットや木の棒で激しく殴打した。黄会長は頭部に致命傷を負い、大量出血により死亡したとみられる。警察によると、男は犯行を認めているとされ、共犯者の有無についても捜査を続けている。
防犯設備停止で憶測も広がる
黄会長は3人の子どもがいるが、自宅には一人で暮らしていた。遺体は全身を透明な粘着テープで巻かれた状態で発見され、自宅や工場の監視カメラ、防犯システムはいずれも停止していた。
APTが軍需や半導体分野で使用される戦略物資であることや、防犯設備が機能していなかったことから、事件当初は外国勢力や組織犯罪の関与、あるいは事業や男女関係を巡るトラブルなど、さまざまな憶測が広がった。
「アジアのタングステン王」と呼ばれた技術者
警察は捜査の過程で、黄会長が女性が接客する飲食店に出入りし、複数の女性との交友や商取引を巡る紛争、過去に詐欺事件で起訴され、和解のうえ執行猶予付き判決を受けた経歴があったことも確認した。一方、一部で報じられた日常的に複雑な交友関係を持っていたとの見方については、現時点で確認できていないとしている。
黄会長はタングステン材料のリサイクル技術で高い評価を受け、2018年ごろには「アジアのタングステン王」と呼ばれた。後に共同経営者らが独立して現在の上場企業、聯友金屬を設立したが、関係者の間では黄会長の技術力を高く評価する声が今も残っている。警察と検察は、事件の計画性を含め、全容解明を進めている。
出典
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2026年8月4日
