台湾住民の6割が「代償問わず抵抗」 中研院調査で浮き彫りとなった防衛意識と対米懐疑論の深層

安全保障

台湾住民の6割が抗戦意志 一方で対米不信も拡大

台湾総統府直属の研究機関、中央研究院欧米研究所は11日、台湾住民の対外意識の世論調査事業「アメリカン・ポートレート」の調査結果を発表した。中国が侵攻した場合、「いかなる代償を払っても抵抗する」との回答は約6割に達した。米軍の支援がないと想定したシナリオでも58.7%が抵抗の意志を示しており、台湾防衛への高い意欲が浮き彫りとなった。台湾の中央通信社などが伝えた。

一方で、「米国は信用できる国か」との問いに対し、同意は34.3%にとどまり、57.4%が否定的な見解を示した。特に「全く同意しない」は22.4%と昨年から急増しており、米国の安全保障の約束を疑問視する対米懐疑論が浸透している。

国防政策については、軍事費の対GDP比3%への引き上げに53.5%が同意した。また、米国からの武器購入には69.5%が支持を表明したが、党派間で差が見られ、野党が多数を占める立法院での予算審議の難しさを裏付ける形となった。

中国については、76.3%が「信用できない」と回答したが、武力行使の可能性については「信じる」と「信じない」が46%台で二分された。調査は1月に20歳以上の成人1206人を対象に実施された。

中国侵攻への抵抗意志と戦略的状況別の民意

今回の調査で最も注目すべきは、有事における台湾住民の「抗戦意欲」の高さである。中研院は米国の「戦略的曖昧さ」政策を前提に、複数のシナリオで抵抗の意志を問い直した。米国が軍を派遣して支援しない場合でも、58.7%(「非常に意思がある」41.2%、「ある程度意思がある」17.5%)が抵抗を継続すると回答している。これは、外部からの支援の有無にかかわらず、自国の主権を守るという強い自己防衛意識の表れと言える。

興味深いのは、米国が参戦した場合の数字である。この場合でも抵抗の意志を示す割合は56.5%(「非常に意思がある」34.4%、「ある程度意思がある」22.1%)と、支援がない場合と大きな差は見られなかった。これは、台湾住民が「自身の安全はまず自らで守るべき」という現実的な防衛観を強めていることを示唆している。

ただし、この数値は支持政党によって大きな開きがある。プロジェクトに参加した東呉大学社会学系の潘欣欣副教授によれば、民進党支持層は米国の出兵の有無にかかわらず一貫して高い抵抗意志を維持している。対照的に、野党である国民党や民衆党の支持層はシナリオの変化に敏感で、米国の支援が得られない状況下では抵抗意志が低下する傾向にあるという。

国防予算増額と武器購入を巡る国内の政治構造

防衛費の増額や米国からの武器購入に対する姿勢も、今後の台湾の安全保障戦略を占う上で重要である。政府が軍事費をGDP比3%まで引き上げることに対し、過半数の53.5%が賛成を投じた事実は、軍拡に対する国民的合意が形成されつつあることを示している。

さらに、米国からの武器購入(対米軍購)については、約7割に近い69.5%が支持を表明している。高額な最新鋭兵器の導入は、中国に対する抑止力を維持するために不可欠であるとの認識が広がっている証左だ。しかし、ここでも政党間の乖離は鮮明である。民進党支持者のほぼ全員が支持する一方で、国民党支持層で支持を表明したのは半数に満たない。

現在の台湾立法院(国会)では、国民党と民衆党が野党連合として過半数の議席を握っている。世論の支持が厚いとはいえ、野党支持層の慎重な姿勢が反映される形で、今後の防衛予算審議や武器調達計画が政局の停滞(グリッドロック)に陥る懸念は拭えない。これは台湾の産業構造や経済リソースの配分にも影響を及ぼす課題となっている。

深化する対米懐疑論と中台関係の不透明性

安全保障における米国への依存が続く一方で、米国に対する信頼感の欠如、いわゆる「対米懐疑論」の浸透は、台湾が抱える大きな矛盾である。今回の調査で、米国を「信用できる」とした回答者はわずか34.3%であり、過去数年の下落傾向に歯止めがかかっていない。特に「全く信用しない」という強い拒絶反応が22.4%に達した点は、米国の関与に対する台湾社会の根深い不安を露呈している。

この不信感の背景には、米中の覇権争いの狭間で、台湾が米国の国益のために「利用される」のではないかという懸念や、米国の国内政治状況による関与の後退(コミットメント・ダウン)への警戒感がある。呉文欽研究員は、これが単なる感情論ではなく、実証的なデータに基づく「対米懐疑論」の形成を裏付けていると指摘する。

対照的に、中国への信頼度は依然として極めて低い(17%)ものの、武力行使の予測については世論が真っ向から割れている。中国が「攻めてくる」と信じる層(46.4%)と「攻めてこない」と信じる層(46.1%)が拮抗している事実は、中国による軍事的威圧が日常化する中で、国民が危機の深刻さを計りかねている現状を反映している。

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