柯文哲前台北市長に懲役17年 再開発めぐる汚職事件
台北地方法院(地裁)は26日、台北市内の商業施設、京華城の再開発をめぐる前市長の汚職事件で、収賄や背任などの罪に問われた前台北市長、柯文哲被告に対し、有期懲役17年、公民権停止6年の一審判決を言い渡した。台湾の中央通信社などが伝えた。
判決によると、柯被告は2020年から22年の市長在任中、開発業者「威京集団」のため、京華城の容積率を不当に緩和した見返りに、威京集団の沈慶京会長から名義人を介して計210万台湾元(約1050万円)の賄賂を受け取った。
地裁は、陣営幹部による「市長も感謝している」との返信から、職務上の対価関係があったと断じた。また、政治献金の横領や基金会資金の流用についても有罪とした。
柯被告は同日夜の記者会見で「司法を弾圧の道具にしている」と猛反発し、頼清徳総統に対し「私は降伏しない」と宣言した。一方、本判決により柯被告は2028年の総統選出馬資格を喪失した。台湾の学者は「政治生命への死刑宣告に等しい」と分析している。地裁は被告に対し、7000万台湾ドルの保釈金と電子足枷による監視継続を決定した。
京華城容積率緩和と収賄の構造
今回の判決の中核となったのは、台北市一等地に位置する商業施設「京華城」の土地再開発に伴う容積率の引き上げである。当初560%であった容積率を、柯政権下で840%まで引き上げたプロセスが、特定の民間企業に対する巨額の利益誘導にあたると認定された。台北地検の試算によれば、この緩和によって威京集団が得た不当な利益は121億台湾元(約580億円)を上回る。
地裁の合議庭は、柯被告が2020年2月に威京集団の沈慶京会長と密会した後、市役所の事務方に迅速な検討を指示した点を重く見た。判決文では、沈会長が7人の名義人を使い、柯被告の政治献金専用口座に分割して振り込んだ210万台湾元について、職務上の行為に対する「前金」および「報酬(後謝)」としての性格を持つと明示された。
さらに、柯被告の側近であった李文宗被告(前市長弁公室主任)が、贈賄側からの連絡に対し「市長も心から感謝している」と返信していたことが証拠として採用された。これは、柯被告自身が資金の流入を認識し、それと引き換えに行政上の便宜を図った「対価性」を裏付ける決定打となった。
政治献金流用と背任罪の認定
本件は単なる行政汚職に留まらず、柯被告が率いる台湾民衆党の不透明な資金管理実態をも浮き彫りにした。判決では、民衆党の政治献金約6134万台湾元の共同横領や、自身が設立した「衆望基金会」の公金約827万台湾元を陣営スタッフの給与に流用した背任罪なども有罪とされた。
これらの罪状を合算した結果、収賄罪で懲役13年、業務上横領罪で懲役2年および3年6ヶ月、背任罪で懲役2年6ヶ月とされ、執行刑として懲役17年、公民権停止6年という重刑が導き出された。裁判所は、柯被告が終始一貫して犯行を否認し、市長としての清廉性を標榜しながら裏で私利を貪った態度は、司法の公正を著しく損なうものであると厳しく指弾した。
2028年総統選への影響と台湾政界の地殻変動
今回の判決は、今後の台湾政局に決定的な影響を与える。台湾の公職選挙法関連規定では、一審または二審で懲役10年以上の判決を受けた場合、控訴中であっても正副総統候補としての登録資格を失う。これにより、2024年の総統選で369万票を獲得し、第三極の旗手として存在感を示した柯被告の2028年出馬への道は事実上閉ざされた。
支持基盤である若年層の間では動揺が広がっている。民衆党主席の黄国昌氏は判決を「政治的迫害」として支持者に結束を呼びかけているが、党の精神的支柱である柯被告の長期離脱は、党の存続そのものを危うくしかねない。専門家は、これまで民衆党が担ってきた「反既得権益」の受け皿が崩壊することで、台湾政治は再び民進党と国民党の二大政党制へ回帰するか、あるいは野党共闘(藍白合)が加速する可能性があると分析する。
執政党である民進党は「司法の独立を尊重する」との公式見解を維持しているが、野党側からは「司法の武器化」を懸念する声が根強い。柯被告が記者会見で「頼清徳よ、私は降伏しない」と宣戦布告したことは、今後この事件が法廷闘争から激しい政治抗争へと発展していくことを示唆している。
さらに、柯被告には本件以外にも、北投士林科学園区(北士科)の再開発を巡る疑獄や、魚果市場の利益誘導など、複数の汚職疑惑が残されており、台北地検による捜査は現在も継続中である。これらの余罪が立件されれば、さらなる刑期の延長や追徴金の発生も予想される。台湾社会が「第三極」に抱いた期待と、その指導者の凋落という現実は、台湾の民主主義と司法制度の在り方を問う歴史的な転換点となるだろう。
[出典]
- 柯文哲京華城貪污案一審判監禁17年、褫奪公権6年(ドイツの波/DW)
- 柯文哲涉京華城等案一審判有期徒刑17年、褫奪公権6年(中央社)
- 柯文哲貪污案一審重判17年失2028大選資格 學者:如政治生命判「死刑」(星島頭条)
- 京華城案一審宣判 北院認定柯文哲收賄210萬(自由時報)
- 柯文哲貪污案一審重判17年失2028大選資格 學者:如政治生命判「死刑」(東網)
[関連情報]
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