国民党の鄭麗文主席が訪中、南京で「92年コンセンサス」強調 台湾政権は反発

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鄭麗文主席が訪中、南京で「92年コンセンサス」の重要性を強調

中国国民党の鄭麗文主席は7日、6日間の日程で中国大陸への訪問を開始した。国民党主席による訪中は10年ぶり。鄭氏は江蘇省南京市で中国共産党中央台湾工作弁公室の宋濤主任と会談し、中台関係の政治的基礎である「92年コンセンサス」と「台湾独立反対」の原則が、今なお揺るぎないものであることを強調した。

鄭氏は7日夜、南京東郊国賓館での晩餐会で、「中台には問題を平和的に解決する能力がある」と述べ、国民党の平和路線こそが台湾にとって最良の選択だと訴えた。一方、宋氏は「92年コンセンサス」を中台関係の「安定の要」と位置づけ、国民党と共に民族復興を推進したいと応じた。

8日午前、鄭氏は孫文の陵墓である中山陵を参拝。その後、江蘇省トップの信長星書記と会談した。午後に上海へ戻り、現地当局者との会談や企業視察を行う。10日には北京で習近平総書記との会談が予定されている。

中国国務院(政府)台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は8日の定例会見で、中台を「身内」と表現し、今回の訪問は平和や協力を求める台湾内の主流派民意に順応したものであると評価した。

一方、台湾で対中政策を所管する大陸委員会(陸委会)は強い警戒感を示している。邱垂正主任委員は、鄭氏に対し中共の政治的演出に加担し「分断の道具」に成り下がらないよう警告。中華民国の存在を認めない枠組みを拒絶し、当局の許可なく政治的合意を結ぶなどの違法行為を避けるよう求めた。

陸委会は、中台問題を「身内の事」とする大陸側の主張について、問題を国際社会から切り離し、中国の国内問題として処理しようとする意図があると批判している。

中台対話の再起動と「身内」論理の背景

今回の鄭麗文主席の訪中は、国民党にとって「平和の守護者」としての存在感を内外に示す絶好の機会となっている。鄭氏は、中台間が注定一戦(戦う運命にあること)を回避し、知恵を持って平和を解決できることを強調した。背景には、台湾国内での選挙を見据えた政治的計算がある。国民党は、現政権である民進党の対中政策が海峡の緊張を高めていると批判し、自らが中国との対話の窓口になれることを有権者にアピールする狙いだ。

対する中国側は、今回の訪中を「内政化」の絶好の機会と捉えている。国台弁の朱鳳蓮報道官が「家裡人(家族、身内)」という言葉を強調したのは、台湾問題が国際問題ではなく、あくまで中国内部の問題であることを国際社会に印象づけるためだ。宋濤主任が2005年の連戦・胡錦濤会談以来の「92年コンセンサス」に言及したことも、中国側が認める唯一の対話基盤への回帰を促す意図がある。

産業構造の観点からも、今回の訪中は注目される。鄭氏が上海でデリバリー大手「美団(メイトゥアン)」の工業区を視察する背景には、中台の経済融合をデジタル経済やプラットフォーム経済の分野へ拡大させる企業戦略がある。台湾の製造業と中国の広大な市場・プラットフォームサービスを繋ぐことは、中台双方の経済的実利に直結する。特に、ハイテク産業への圧力が強まる地縁政治リスクの中で、国民党は経済交流による緊張緩和という「実利」を看板に掲げている。

統一戦線工作への警戒と国際社会への影響

一方で、台湾当局である陸委員会の邱垂正主任委員が放った「分断の道具」という言葉には、台湾国内の民主主義制度への深刻な懸念が込められている。邱氏は、中共が政党交流を利用して政府間交渉をバイパスし、台湾の民意を分断しようとする「統一戦線工作(統戦)」の手法を鋭く批判した。

特に「法律のレッドライン」への言及は、国民党が政府の授権なく、公権力に関わる合意を中国側と結ぶことを牽制するものだ。台湾の法律では、政治的合意には厳格な監督メカニズムが必要とされる。陸委会は、鄭氏が「一つの中国の枠組み」という罠にはまり、中華民国の主権を実質的に消滅させる言説に加担することを最も恐れている。

国際社会にとっても、今回の「鄭習会」の動向は、台湾海峡の安定性を左右する変数となる。国民党は「地域平和の構築者」としての役割を強調するが、それが「中国の描く平和」に呑み込まれる形であれば、台湾の自律的な安全保障環境は損なわれかねない。台湾国内の世論調査では、国民党の訪中が選挙にプラスに働くと見る層が一定数存在するものの、その実態が「国家主権の切り売り」と映れば、逆に国民の支持を失うリスクも孕んでいる。10日の習近平総書記との会談で、鄭氏がどこまで「中華民国の存在」と「台湾の主流民意」を中国トップに直言できるかが、今後の評価の分かれ目となるだろう。

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