台湾行政院は11月6日、卓栄泰行政院長が、立法院で可決された老人福利法第22条の改正に副署しないと発表した。一定の所得条件を満たす65歳以上の高齢者の健康保険料を中央政府が全額補助する内容で、行政院は財政負担の増加や、経済的に困窮する高齢者への医療費補助の根拠が削除されることなどを問題視している。
TVBSによると、行政院の李慧芝報道官が同日午後、方針を説明した。立法院では国民党と民衆党が協力して改正案を可決していた。対象となるのは65歳以上で、直近1年間の総合所得が申告基準に達しないか、適用される所得税率が20%未満の高齢者である。
行政院は、今回の改正には3つの問題があると主張した。第1は、従来の法律にあった診療時の自己負担分と保険給付の対象外となる医療費への補助規定が削除され、経済的に困窮する高齢者の支援に空白が生じるという点である。李氏は、影響を受ける可能性がある中低所得の高齢者を約6万6000人と説明した。政府が問題視したのは、家計の総収入が最低生活費の1.5倍を超え、2.5倍以下となる高齢者層の医療保障である。保険料補助の対象が広がっても、診療費を支払う際の支援が同じ形で維持されるとは限らないとする指摘である。
第2は財政への影響である。行政院は、所得条件による高所得者の除外効果が乏しく、65歳以上の8割超が健保料補助の対象になり、毎年約400億台湾元の追加支出が必要になると試算した。高齢化に伴って費用がさらに膨らみ、ほかの政策向けの財源や若い世代の負担に影響するとの見方を示した。これらの人数と財政試算は行政院の説明による。
第3は、行政院が施政計画や予算案を作る権限との関係である。行政院は、財源を伴わない大幅な支出増は憲法上の権力分立に反すると主張し、卓氏は行政院長の副署権に基づいて対応すると説明した。違憲性については政府側の法的見解であり、司法判断が確定したことを意味するものではない。
健保料の補助は、病院の窓口で支払う自己負担分や保険対象外の診療費の補助とは異なる制度である。今回の対立は、保険料の負担を広く軽減する制度の導入と、従来の医療費支援をどう維持するかという2つの問題を含んでいる。
行政院は、福祉政策は実質的な借り入れを増やさず、ほかの政策を圧迫せず、法と憲法に沿う形で進める必要があるとの立場を示した。今回の発表は可決済み改正案への対応であり、65歳以上の対象者が既に全国一律で健保料を免除されたことを示すものではない。
